変圧器の負荷電流に関する実験
ドーナツ鉄心で、1次コイルと2次コイルを同じ位置に巻いた場合でも、別々の位置に離して巻いた場合でも、負荷電流は磁束を作りませんでした。無負荷時の飽和1次電流は0.057Aと0.12Aでしたが、負荷電流が1.2Aになっても磁束の飽和は在りませんでした。
負荷電流が磁束を作らない理由を考えてみました。負荷電流は1次コイルと2次コイルに流れますが、1次コイルと2次コイルの負荷電流は互いに逆向きの磁界を作ります。鉄心に作用するのは、両者の合計磁界です。磁束密度B、透磁率μ、磁界Hとすれば、B=μHです。実験では1次コイルと2次コイルの巻数を同じにしてありますから、1次コイルと2次コイルの磁界の大きさは同じで向きが反対です。その為、B=μHのHは0になり、磁束密度が0になり、磁束が0となります。「負荷電流が磁束を作らない」と言う時の負荷電流は、1次コイルの負荷電流と2次コイルの負荷電流を考慮した負荷電流のことです。1次コイルと2次コイルの巻数が異なる場合は、次のようになります。
1次コイルの巻数をN1、2次コイルの巻数をN2、1次コイルの電流をI1、2次コイルの電流をI2とします。1次コイルの作る磁界と2次コイルの作る磁界の大きさは同じですから、 I1×N1=I2×N2 です。これより、I1=I2×(N2/N1) となります。2次コイルの巻数が1次コイルの(1/2)の場合、1次コイルの電流は2次コイルの(1/2)となります。
1.実験に使用した変圧器の写真と仕様
コイルを同じ位置に巻いたもの コイルを別々の位置に巻いたもの
2.無負荷、負荷時の1次コイルの電流ー電圧グラフ
2-1.1,2次コイルを同じ位置に巻いた場合
グラフの説明
①横軸:1次コイル電流A 縦軸:1次コイル電圧V
②青色(130PV∞):無負荷時の130Vコイルの電流ー電圧です。
1次コイルは、単巻変圧器のコイルなので、130V端子と100V端子が
在ります。上の表に在る1次コイルの巻数246は130V端子のものです。
③灰色(100PV130):無負荷時の100Vコイルの電流と電圧を130V
コイルに変換したものです。
④青色のグラフと灰色のグラフが重なっていて、変換が正しいことを示しています。
⑤オレンジ色(PV100):2次コイルの負荷抵抗が100Ωの場合の1次コイルの
電流ー電圧です。
⑥灰色のグラフは、電流が0.057Aから磁束の飽和が始まることを示しています。
⑦オレンジ色のグラフは負荷電流が0.057Aを超えても、電圧が130Vになる迄
は磁束の飽和がないことを示しています。
無負荷時の電流ー電圧です。
記号の説明
①130PI∞:130Vコイルの1次無負荷電流です。
②130PV∞:130Vコイルの1次無負荷電圧です。
③100PI∞:100Vコイルの1次無負荷電流です。
④100PV∞:100Vコイルの1次無負荷電圧です。
⑤100PI130:100Vコイルの電流を130Vコイルに変換したものです。
⑥100PV130:100Vコイルの電圧を130Vコイルに変換したものです。
100Vコイルの電流と電圧を130Vコイルに変換する方法
鉄心中に磁束Φがある場合、このΦで発生する電圧はコイルの巻数に比例し、このΦを発生させる電流はコイルの巻数に反比例します。そして、130Vコイルの巻数は100Vコイルの巻数の1.3倍ですから、100Vコイルの電圧、電流を130Vコイルに変換すると、電圧は1.3倍に、電流は 1/1.3 になります。
2次コイルの負荷抵抗が100Ωの時の1次コイルの電流ー電圧です。
記号の説明
①PI:1次コイル電流、PV:1次コイル電圧、SI:2次コイル電流、SV:2次
コイル電圧、NV:無負荷コイルの電圧です。
②KSCV:計算による2次コイルに発生する電圧です。この計算はSVと(SI×2
次コイルの内部抵抗)の合計です。つまり、2次コイルの電圧に2次コイルの内部
抵抗による電圧降下を足したものです。
KSCV=SV+(SI×2次コイルの抵抗)
KSCVはNVとよく一致しています。
③KPCV:計算による1次コイルに発生する電圧です。
KPCV=((PV^2-(励磁電流×1次コイルの抵抗)^2)^0.5
ー(負荷電流×1次コイルの抵抗)
励磁電流は各PV100の時の無負荷電流です。上式の励磁電流として、無負荷時のPI-PVを使えるのは、負荷電流が流れても、無負荷時のPI-PVは変化しないからです。PV100が60.5Vなら、無負荷時の電流ー電圧で、電圧が60.3Vの時の電流0.012Aを励磁電流として使えるのです。
④右側の100は、負荷抵抗が100Ωであることを示しています。
⑤電流、電圧の位相は、6-1.に示します。
2-2.1,2次コイルを別々の位置に巻いた場合の電流ー電圧です。
グラフの説明
①横軸:1次コイル電流A 縦軸:1次コイル電圧V
②青色(PV∞):無負荷時の電流ー電圧です。
③オレンジ色(PV100):2次コイルの負荷抵抗が100Ωの時の1次コイルの
電流ー電圧です。
④青色のグラフは、コイル電流が0.12Aから磁束の飽和が始まることを示してい
ます。
⑤オレンジ色のグラフはコイル電流が0.12Aを超えても、電圧が100Vになる迄
は磁束の飽和がないことを示しています。
⑥無負荷時のグラフが、1、2次コイルを同じ位置に巻いた場合のグラフと少し違いますが、これは鉄心の断面積と透磁率の違いによるものです。電流は、断面積×透磁率に反比例します。コイルが同じ位置の鉄心の断面積は、コイルが別々の位置の鉄心の断面積の1.86倍です。無負荷時の電流ー電圧で、1、2次コイルを同じ位置に巻いた場合で、電圧が100Vにおける電流は、コイルが別々の位置の電流の、
0.022/0.12=1/5.45です。ですから、5.45=(1.86×(透磁率の比))です。従って、1、2次コイルを同じ位置に巻いた場合の鉄心の透磁率は、コイルが別々の位置の鉄心の透磁率の5.45/1.86=2.93倍になります。
無負荷時の電流ー電圧です。
2次コイルの負荷抵抗が100Ωの時の1次コイルの電流ー電圧です。
記号の説明
①PI:1次コイル電流、PV:1次コイル電圧、SI:2次コイル電流、SV:2次
コイル電圧、PNV:1次側無負荷コイル電圧、SNV:2次側無負荷コイル電圧
です。
②NPNV:PNVを260回から251回の巻数に変換した電圧です。
NPNV=(PNV/260)×251
③NSNV:SNVを260回から251回の巻数に変換した電圧です。
④KSCV:計算による2次コイルに発生する電圧です。この計算はSVと
(SI×2次コイルの内部抵抗)の合計です。つまり、2次コイルの電圧に2次
コイルの内部抵抗による電圧降下を足したものです。
KSCV=SV+(SI×2次コイルの抵抗)
⑤KPCV:計算による1次コイルに発生する電圧です。
KPCV=((PV^2-(励磁電流×1次コイルの抵抗)^2)^0.5
ー(負荷電流×1次コイルの抵抗)
励磁電流に関しては、2-1.の負荷時の電流ー電圧の③を参照願います。
⑥右側の100は、負荷抵抗が100Ωであることを示しています。
⑦電流、電圧の位相は、6-1.に示します。
2-3.ボビン空芯コイルの場合の電流ー電圧です。
ボビン空芯コイルの写真です。
(1)コイル仕様
線径1mm2本と線径0.4mm1本を一緒に巻きました。
コイル仕様 ボビン寸法
1、2次コイル共線径1mmのコイルです。
(2)実験記録
1次コイルの電流ー電圧です。
グラフの説明
①横軸:1次コイル電流A 縦軸:1次コイル電圧V
②青色(PV∞):無負荷時の電流ー電圧です。
③オレンジ色(PV12):2次コイルの負荷抵抗が11.8Ω(コイル抵抗3.2Ω
を含みます)の時の1次コイルの電流ー電圧です。
④鉄心がないので無負荷時でも磁束の飽和は在りません。
無負荷時の電流電圧です。
負荷抵抗が11.8Ω(コイル抵抗3.2Ωを含みます)の時の1次コイルの
電流ー電圧です。
記号の説明
①PI:1次コイル電流、PV:1次コイル電圧、SI:2次コイル電流、SV:2次
コイル電圧、NV:線径0.4mmの無負荷コイルの電圧です。
②KSCV:計算による2次コイルに発生する電圧です。この計算はSVと(SI×
2次コイルの内部抵抗)の合計です。つまり、2次コイルの電圧に2次コイルの内部
抵抗による電圧降下を足したものです。
KSCV=SV+(SI×2次コイルの抵抗)
KSCVはNVとよく一致しています。
③KPCV:計算による1次コイルに発生する電圧です。
KPCV=((PV^2-(励磁電流×1次コイルの抵抗)^2)^0.5
ー(負荷電流×1次コイルの抵抗)
励磁電流については、2-1.の負荷時の電流ー電圧の③を参照願います。
④右側の12は、負荷抵抗が11.8Ω(コイル抵抗3.2Ωを含みます)であること
を示しています。
⑤電流、電圧の位相は、6-1.に示します。
3.A、Bコイルを負荷電流のようにA、Bコイルが互いに反発するように直列に接続した場合の実験記録
3-1.A、Bコイルを同一位置に巻いた場合
(1)コイル仕様
(2)A、Bコイルが同じ巻数の場合
記号の説明
①II:入力電流、IV:入力電圧、AV:Aコイル電圧、BV:Bコイル電圧、
NV:無負荷コイル電圧です。
②IV=AV+BV となっています。
③KACV=計算によるAコイルに発生する電圧
=(AV^2-(II×Aコイルの抵抗)^2)^0.5
④KBCV=計算によるBコイルに発生する電圧
=(BV^2-(II×Bコイルの抵抗)^2)^0.5
(3)Bコイルの巻数がAコイル+1の場合
ほぼ、IV=BVーAVとなっています。
(4)Bコイルの巻数がAコイル+5の場合
IVと(BVーAV)が違っていますが、理由はわかりません。(3)よりNVが大きくなっています。
3-2.1、2次コイルを別々の位置に巻いた場合
(1)コイル仕様
(2)A、Bコイルが同じ巻数の場合
記号の説明
①ANV:Aコイルの無負荷コイル電圧
②NANV:ANVを巻数260回から251回に変換した電圧
③IV=AV+BV となっています。
(3)Bコイルの巻数がAコイル+2の場合
IV=BV-AV となっています。
(4)Bコイルの巻数がAコイル+20の場合
IVが(BV-AV)と違っています。
(5)漏れ磁束測定
Aコイルで測定しました。A、Bコイルの巻数は同じです。
①下の写真のようにして測定しました。
上の漏れ磁束測定用のコイルの写真 巻数:50回
②測定結果と電流干渉率
記号の説明
①ALV:Aコイルの漏れ磁束用コイル電圧
②KACV=計算によるAコイルに発生する電圧
=(AV^2-(II×Aコイルの抵抗)^2)^0.5
③KBCV:計算によるBコイルに発生する電圧
④NALV:ALVをAコイルの巻数の変換したものです。
NALV=ALV×(251/50) です。
⑤K:電流干渉率(Aコイルで計算しました。)
電流干渉率の計算
AとB、二つの電磁石による電流干渉実験で作ったものです。これをドーナツ鉄心に離して巻いたA、Bコイルに適用しました。1.のコイルを別々の位置に巻いたものです。二つの電磁石による電流干渉実験の詳細は「5.二つの電磁石の電流干渉」にあります。
コイルの電流をIsとします。
コイルAに発生する電圧をVsとします。
非干渉時の電流をInとします。
非干渉時のAコイルに発生する電圧をvnaとします。
電磁石Bに流れる電流の一部が電磁石Aに影響を与えるのですがこの割合をKとしま
す。
コイルに発生する電圧はコイルの電流に比例するので
vna=k×Inです。kは定数です。
干渉時にコイルAに発生する電圧は
Vs=k×(Is+K×Is)=k×Is×(1+K)
k=vna/Inですから代入して
Vs=(vna/In)×Is×(1+K)
これよりKは
K=(Vs/Is)×(In/vna)-1
となります。
3-3.A、Bコイルを同じ位置に巻いた場合の反発実験の電流ー電圧と電流干渉率
(1)コイル仕様
1.の「コイルを同じ位置に巻いたもの」を使用しました。
(2)実験結果
記号の説明
①KACV:計算によるAコイルに発生する電圧
②KBCV:計算によるBコイルに発生する電圧
③KA:Aコイルによる電流干渉率
3-4.ボビン空芯コイルによる反発実験記録と電流干渉率
(1)実験結果
AコイルとBコイルが同じ巻数の場合
Bコイルの巻数がAコイル+30回場合
(2)無負荷電流と電圧及び電流干渉率
4.電流干渉率の考察
4-1.各コイルの電流干渉率の比較
ドーナツ鉄心で、A、Bコイルを同じ位置に巻いた場合:-0.9998
ドーナツ鉄心で、A、Bコイルを別々の位置に巻いた場合:-0.996
A、Bコイルを一緒に巻いた空芯コイルの場合:-0.793
因みに、A、Bコイルを一緒に巻いた空芯コイルの場合、吸引時の電流干渉率は
0.99です。
4-2.ドーナツ鉄心のコイルに発生する電圧の比較
4-3.ドーナツ鉄心の電流干渉率の比とコイルに発生する電圧の比
コイルに発生する電圧は漏れ磁束によるものですから、漏れ磁束の比と発生電圧の比は同じになるものと思っています。
漏れ磁束の比=(1-0.996)/(1-0.9998)
=0.004/0.0002=20倍
発生電圧の比=6.55/2.07=3.2
電圧比の計算
A、Bコイルが別々の位置の場合でも、同一位置の場合でも、コイルに流れる電流は同じですが、発生する磁束は、鉄心の断面積×透磁率の違いにより異なります。2-2.グラフの説明の⑥に示される通り、同じ電流なら、同一位置の方が別々の位置よりも5.45倍の磁束が発生します。同一位置の磁束をΦ1、電圧をV1 とし、別位置の磁束をΦ2、電圧をV2とすると、電流が同じ場合、Φ1=Φ2×5.45です。
V2=K2×Φ2×0.004
V1=K2×Φ1×0.002=k2×Φ2×5.45×0.0002
V2/V1=(k2×Φ2×0.004)/(k2×Φ2×5.45×0.0002)
=(0.004/0.0002)/5.45
=20/5.45=3.7 となり、実験の電圧比とほぼ同じです。
4-4.ボビン空芯コイルの電流干渉率
反発時の電流干渉率はー0.793、吸引時の電流干渉率は0.991です。A、Bコイルは一緒に巻いてあるのですから、反発時の電流干渉率も、吸引時の電流干渉率も同じになると思っていたのですが、そうではありませんでした。
隣り合う2本の導体に電流を流した時、同じ向きの場合は吸引力が働き、逆向きの場合は反発力が働きます。この違いが、吸引時と反発時の電流干渉率の違いになっているのだと思います。
電磁石の吸引力及び反発力と磁束密度との関係を実験で調べました。吸引力は教科書にある通り磁束密度の2乗に比例していました。反発力もおおよそ磁束密度の2乗に比例していました。これにより、磁束線(磁力線)には縮もうとする吸引力と広がろうとする反発力が在るものと考えています。
吸引時のAコイルとBコイルの隣り合う導体には同じ向きの電流が流れていますから、吸引力が働きます。ですから、それぞれの導体の磁束線(磁力線)は反発しないと思っています。そして、それぞれの導体の磁束は、1本の導体だけの場合のように広がっているのだと思っています。
反発時のAコイルとBコイルの隣り合う導体には逆向きの電流が流れていますから、反発力が働きます。ですから、それぞれの導体の磁束線(磁力線)は反発しているものと思っています。そして、それぞれの導体の磁束は、1本の導体だけの場合のように広がらないのだと思っています。導体の磁束の広がりが抑えられるから、電流干渉率が小さくなるものと思っています。
4-5.A、Bコイルを同じ位置に巻いた場合の漏れ磁束
A、Bコイルは同じ位置に巻いたのですが、Aコイルを1層で巻き、その上にBコイルを1層で巻いたものです。ボビンのように一緒に巻いたものではありませんから、A、Bコイルそれぞれを循環する磁束線(磁力線)が在るものと思っています。
5.二つの電磁石の電流干渉率
二つの電磁石の電流干渉率の記録がありますので、紹介します。
5-1.測定方法、コイル仕様
(1)測定方法
非干渉時の電圧をそのままにして、電磁石の隙間を変えて電流を測定しました。吸引と反発で測定しました。
(2)コイル仕様
電磁石A、B共コイルの巻数は300回、コイルの抵抗は2.63Ωです。
電磁磁石A、Bは直列に接続します。
コイルA、Bの写真です。
5-2.電流干渉率の記録
電流0.5A、1A、2A、4Aは非干渉時の電流です。±0.05Aに調整しました。それぞれの電流で電圧が違いますが、非干渉時の電圧そのままで、電磁石の隙間を変えて電流を測定しました。
反発時の電流干渉率が小さいのは、磁界が磁束と共に漏れてしまうからだと思っています。
6.1次コイルに負荷電流が流れる理由
無負荷時は、1次コイルに発生する電圧と1次コイルの抵抗の電圧降下の合計で入力電圧と釣り合っています。1次コイルに発生する電圧の位相と1次コイルに流れる電流の位相が90°ずれていますから、合計はベクトルの合計となります。
2次コイルに抵抗が接続され、2次コイルに電流が流れると、2次コイルの電流が作る磁界と逆向きの磁界を作る電流が1次コイルに流れます。しかし、2次コイルの磁界が、入力電圧と釣り合っている1次コイルの合計電圧を下げなければ電流は流れません。無負荷時のつり合いが崩れ、電流が流れ、元の釣り合いの状態に戻らなければなりません。ここでは、このことを考えてみます。変圧器の電流、電圧、磁束の位相から見て行きます。
6-1.変圧器の電流、電圧、磁束の位相
電流には、励磁電流と負荷電流があります。励磁電流は無負荷時に1次コイルに流れる電流で、記号はI0です。実験では、負荷として2次側に抵抗を接続しましたが、この時に流れる電流が負荷電流です。
下のグラフは電流、磁束、電圧の時間的変化を示します。
横軸は角度ですが、1秒間に1度進むとすれば、秒になります。
下の図はベクトルの位相を表すものですが、上のグラフの縦軸の値は下の図のy成分です。ベクトルは反時計方向に回転しますから、ベクトルのy成分は上のグラフのように変化します。
グラフの説明
6-2.6-1.変圧器の電流、電圧、位相を使った計算
1、2次コイルが同じ位置の変圧器で、入力電圧を100Vにし、2次コイルの抵抗を変えて、電圧、電流を測定しました。下記がその記録です。
(1)コイル仕様
(2)測定及び計算した電流、電圧 と1次コイル電流ー2次コイル電流のグラフ
1次コイル電流ー2次コイル電流のグラフ
横軸:1次コイル電流A 縦軸:2次コイル電流
殆ど、y=xです。
記号の説明
①PI:1次コイル電流、PV:1次コイル電圧、SI:2次コイル電流、SV:2次コイル電圧、NV:無負荷コイル電圧
②KSCV:計算による2次コイルに発生する電圧です。この計算はSVと(SI×2次コイルの内部抵抗)の合計です。つまり、2次コイルの電圧に2次コイルの内部抵抗による電圧降下を足したものです。
KSCV=SV+(SI×2次コイルの抵抗)
KSCVはNVとよく一致しています。
③KPCV:計算による1次コイルに発生する電圧です。
KPCV=((PV^2-(励磁電流×1次コイルの抵抗)^2)^0.5
ー(負荷電流×1次コイルの抵抗)
励磁電流については、2-1.の負荷時の電流ー電圧の③を参照願います。
④KPV:計算による1次コイルに掛かる電圧です。
KPV=((NV+負荷電流×1次コイル抵抗)^2)
+(励磁電流×1次コイル抵抗)^2)^0.5
⑤KSV:計算による2次コイルに掛かる電圧です。
KSV=NV-負荷電流×2次コイル抵抗
⑥殆ど、NV=KPCV=KSCV となっています。
⑦殆ど、PV=KPV、SV=KSV となっています。
6-3.1次コイルに負荷電流が流れる理由
2次コイルに抵抗負荷を接続すると、励磁電流によって2次コイルに発生した電圧と同相の電流が2次コイルに流れます。1次コイルには2次コイルの電流と位相が180°ずれた電流が流れます。実験では1次コイルと2次コイルの巻数は同じなので、上のグラフで見る通り、1次コイルと2次コイルの電流は殆ど同じでした。1次コイルには、負荷電流と位相が90°ずれた励磁電流も流れているのですが、0.022Aと小さいため、負荷電流への影響が小さく、励磁電流も流れている1次コイルの電流が2次コイルの電流と殆ど同じ値になるのです。
2次コイルに負荷電流が流れると1次コイルにも電流が流れますが、その理由がよく分かりません。2次コイルの負荷電流の位相が励磁電流の位相よりも180°ずれていれば、2次コイルの負荷電流の磁界が励磁電流の磁界を減らすように働くため、1次コイルの磁束が減り、励磁電流によって1次コイルに発生する電圧が下がるので、1次コイルに電流が流れると考えられます。しかし、励磁電流と負荷電流の位相のずれは90°なので、別の理由を考えなくてはなりません。
1次コイルに掛かる電圧を計算していますが、その時使った
KPV=((NV+負荷電流×1次コイル抵抗)^2+
(励磁電流×1次コイル抵抗)^2)^0.5
を負荷電流が0の無負荷の時の式に直すと
KPV=(NV^2+(励磁電流×1次コイル抵抗)^2)^0.5
となります。これに、2次コイルの負荷電流が1次コイルに発生する仮想電圧も考慮すると(仮想電圧の位相は6-1.に示します。)
KPV=(NV^2+(励磁電流×1次コイル抵抗ー仮想電圧)^2)^0.5
となり、1次コイルの電圧が下がる式になります。そして、瞬間的に1次コイルに負荷電流が流れます。コイルに瞬間的に電流が流れれば、コイルに電圧が発生して電流の増加にブレーキがかかるはずですが、1次コイルにも2次コイルにもそのブレーキはかかりません。1次コイルと2次コイルの負荷電流が作る磁界が相殺し合って、どちらのコイルにも負荷電流の増加による電圧が発生しないからです。1次コイルも2次コイルも負荷電流に対してリアクタンスにならないことは、1次コイルに発生する電圧を計算したKPCVや2次コイルに発生する電圧を計算したKSCVが、負荷電流対するリアクタンスを含まないにも関わらず、無負荷コイルの電圧、NVに良く一致していることからも分かります。1次コイルが2次コイルの負荷電流に反応する時間の遅れは、2次コイルの負荷電流が作る磁界が1次コイルに届く時間だと思っています。.オシロスコープでも観察できない時間だと思っています。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。